大森 英雄 氏
日産自動車株式会社
グローバル情報システム本部
IT企画運用部 主担

大森 英雄 氏
日産自動車株式会社
グローバル情報システム本部
IT企画運用部 主担
日産自動車(株)グローバル情報システム本部では、2006年に「BEST」プログラムを立ち上げ、明確な情報システム戦略のもと、IT投資の最適化とワールドクラスの情報システム基盤の確立に取り組んでいます。
クライアントPCの運用について、エンドユーザ向けサービスの向上とコストの最適化という、相反した要素に取り組んでいる大森 英雄氏は次のように述べています。
「日産自動車では、車両の企画・設計といったエンジニアリング部門から、広報・営業・人事等の事務系の業務、そして生産拠点にいたるまで、数多くのユーザが非常に幅広い業務を行っています。各部門の業務において、パソコンは必須の道具であり、パソコンの配備や障害対応など、エンドユーザに向けたサービスを円滑に進めることはIS部門として大きなミッションです。運用を続ける中で、PCの運用サービスを順次立ち上げてきましたが、エンドユーザの満足度を向上させるためには、運用の品質とコストをより高いレベルでコントロールしていくことが必要だと考えていました。」
日産自動車殿は、多くの大規模拠点を展開しており、PC運用のボリュームも日本有数のものです。
| PC運用台数 | 40,000台 |
| 老朽PCの入れ替え(年間) | 10,000台(年間) |
| 関連インシデント数(年間) | 20,000インシデント |
多種・大量のPCが存在し、さまざまな業務を行うエンドユーザを抱えた難しい状況での運用管理をコントラーブルに実行するために、日産自動車殿とNRIは「クライアントPCの運用変革」をテーマとして、協働関係をはじめました。
プロジェクト初期にまず実施したことは、運用改革の目標を設定し、その目標をコミットするための活動計画を充分に練り上げることでした。
実際に行われている業務を仔細に確認し、NRIのPC運用実績とのベンチマークを活用しつつ、IT企画運用部殿ともに改善のアイデアを、ひとつひとつピックアップしていきました。
その結果、目標とするサービスレベルに足りない業務とやり過ぎている業務を整理し、業務アイテムの再構築を行いました。さらに、新しい運用業務を支援し、かつ、日産自動車殿の環境にフィットする運用支援ツールを選別し、実装していきました。
また、IT企画運用部殿とともに、エンドユーザ部門からの声をサービスに反映する活動を行いました。PCの設置や更新、移設などの作業について、どのようなニーズや不満があるのか、部門側のPC運用に関わる工数は適正かどうかといった観点から意見を聞き、運用業務の設計に反映していきました。
「NRIとのプロジェクト進行は、互いのアイデアを徹底的にブレーンストーミングすることから始まりました。必ずしも大きなアイデアばかりではなく、ちょっとしたやり方の工夫についても充分な議論をすることができました。NRIとの大規模な協働は初めての経験でしたが、場数を踏んでいるというか、現場の運用をよく知っているな、という印象を受けました。」(大森氏)
運用改革活動のプランニングを完了し、活動の成果目標を大きく3点設定しました。この目標値は、改革活動の開始に先立って収集したベンチマークと照合しても、トップレベルといえるものでした。
| @ PC資産管理精度 | :100% |
| A PC更新(入れ替え)作業効率 | :月間3,000台 |
| B PC納入リードタイム | :3営業日以内 |
■ PC資産管理精度の向上
運用改革以前は、PCの資産管理方法として、インベントリ収集ツールを実装し、データ収集を行っていましたが、捕捉率は8割前後という状況でした。 PCの増設〜稼動〜撤去までの運用業務を見直したところ、ツール導入の網羅性の低さ、不要PCの回収業務の不徹底、などが課題として抽出されました。 これらの課題に対し、以下の様な対策を行っています。
・ 資産管理ツールのログオンスクリプト化による網羅性向上
・ ログオン情報の収集によるPC稼働率データの集計・分析
・低稼働率PCの回収の実施、回収機の正確な把握のためのバーコード活用
この活動の結果、現在ではPC資産をほぼ把握することができています。しかし、”100%”の達成には、ツールが導入できないPCへの対応や、特別な環境に設置されているPCなど、“ラストワンマイル”とでもいうべき、大きなハードルもあります。 目標達成に向け、技術面、業務面の両面からの管理精度追求を続けています。
■PC更新作業効率の向上
PCハードの性能向上やソフトウェアの進化にあわせ、総数4万にのぼるPCを、3年から4年間隔で順次更新していく必要があります(=年間約1万台)。この作業を集中・短期的に行い、作業工数を最適化するため、月間3,000台を入れ替えることのできる作業効率を目標におきました。 この目標の達成には、以下の様なアプローチを取りました。
・ PC設置前のソフト導入範囲を拡大し、現地作業時間を短縮
・ 入替え前PCのインベントリを新PCにプリセットし、ユーザ作業を削減
・ PC上のデータバックアップ環境を整備し、旧PC→新PCへの移行作業削減
この活動の結果、月間3,000台の目標を超え、最大4,000台までの作業キャパシティを確保することができました。また、この改善活動の成果として、作業方式や手順の標準化が進んだため、集中・短期化のみではなく、作業ピークを抑えた更新計画の検討もできるようになりました。
■PC納入リードタイムの短縮
日産自動車殿では、ダイナミックな事業活動に対応するため、要員の増加やプロジェクトの立ち上げが多く発生します。さまざまな活動を支える道具としてのPCも需要にあわせた柔軟な配備を行わなければなりません。
そのために、PCの納入リードタイム「増設申請手続き完了後3営業日以内」という目標を設定しました。この目標の達成のために、以下のような改善を行いました。
・ PCキッティング作業の自動化率向上によるキャパシティ確保
・ 全国拠点へのデリバリルートと設置作業要員の高度なコントロール
このテーマについては、現在では99%の遵守率となっています。現在は、増設申請の手続きの改良を行うことで、ユーザ要求の発生から納入までの全体サプライチェーンの効率向上にむけた、継続的なチューニングを行っています。
2004年から開始した運用改革は、3年が経過しています。これまでの活動では、体制やツールの大きな変革を伴った「階段状の改善」と、日々の運用の中でピックアップされた課題・問題点をクリアする「継続的でスロープ状の改善」を同時に行ってきました。
運用の改善は、PCの利用形態や技術の変革、管理すべき要件の変化にあわせ、常にフィットした形を模索し、実現していく活動です。『これで完成』ということはなく、『いつでも通過点』であると考えています。先に掲げた3大目標の実現に向けた活動からは、以下のような成果も得ることができました。
2007年9月現在、エンドユーザからのサービス評価指標である、ユーザ満足度調査の数値は4pt(5PT満点)を超え、サービスの改善は着実に成果をあげています。
プロジェクトのパートナとしてのNRIを大森氏はこう評価しています。
「今までやりたくてもできなかったことを、NRIとのパートナシップの中でひとつひとつ実現してきました。アウトソーサとしてのNRIとの関係は、SLAなどの仕組みを通じて、日産自動車の要求にフィットした成果がもたらされているかどうかを可視化できるものになってきました。エンドユーザに対するサービスとコストの関係をよりバランスしたものにしていくために、今後もより一層の成果を期待しています。」
NRIでは、運用業務を確実に実施するとともに、運用状況の分析を通じた継続的な改善活動を続けていきます。また、新たな手法やテクノロジーの適用による累進的な変革への挑戦を行い、PCの価値を最大限に発揮することのできる運用を提供していきます。
1933年の創業以来、商品開発や技術革新、グローバル化等において、常に日本の自動車産業をリードしてきた。現在、販売台数420万台の実現等を目指した中期経営計画「日産バリューアップ」のもと、環境対応や安全性・快適性を実現する車づくりに取り組み、その伝統を21世紀の今、「人々の生活を豊かに」というビジョンの実現に向けて大きく発揮しようとしている。ルノーとの提携のもと、国内に車両、及びエンジン製造合わせて5工場、北米、欧州、アジア、中近東、アフリカに拠点を持ち、グローバルに展開している。従業員数は単独32,746名、連結186,336名。売上高10兆4,686億円、グローバル販売台数3,483,128台(2006年度連結)。