コロナ禍を契機にテレワークやハイブリッドワークが推進される一方で、オフィスの固定電話の着信対応をどうするか、また従業員間の内線通話をどうすればよいかに悩む企業も多いでしょう。そうした課題を解決するために、これまでIP-PBXを活用していた野村総合研究所(以下、NRI)では、クラウドPBX機能を提供する「 Zoom Phone(※1)」の導入を開始しました。働く場所を問わずにスマートフォンで会社代表やチーム代表などの固定電話番号宛の着信に対応できる環境を整備。各従業員がより高い生産性を発揮できる環境づくりを推し進めています。
NRIは1965年に設立されました。1988年に、システムインテグレーターの先駆け的な存在であった「野村コンピュータシステム」と合併し、新生NRIが誕生。前身時代を含め、これまで半世紀以上に渡り、企業戦略の提案や政策提言、システム開発・運用をはじめとする幅広いビジネスを展開しています。
NRIは、2001年に東京証券取引所第一部に上場した後も持続的な成長を続けており、現在は日本のほか、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニアに拠点を置き、それぞれの国のメンバーが連携しながら、グローバルに事業を展開する企業をサポートしています。
2015年4月にスタートした長期経営ビジョン「Vision 2022」では、成長戦略の5本柱の1つとして「生産革新のさらなる追求」を掲げています。生産性に関する徹底的な改革を通して顧客企業のITの品質向上と効率化に貢献するとともに、早期から裁量労働制やテレワーク(在宅勤務)制度を取り入れるなど、社内においても社員一人ひとりが働きやすい環境整備を進めています。
2022年、テレワークやハイブリッドワークが世の中でますます普及する中、柔軟な働き方によって改革を進めるために、1つの重要な取り組みを開始しました。それがクラウドPBXである「 Zoom Phone 」の導入です。この背景にはどのような課題があったのでしょうか。
NRIでは、国内において新型コロナウイルス感染症が蔓延するなかで社員の出社率を抑えるためにテレワークが推奨され、出社する人数を減らす方針が取られました。以前からテレワークの環境整備に取り組んでいたため、オンライン会議ツールのZoomを活用することで、比較的スムーズに業務を遂行することができました。しかし、課題になったのがオフィスの固定電話でした。
「社員が出社する機会が減っていく中で、固定電話に関して3つの課題がありました。」と語るのは総務部 シニアアソシエイトの有元裕統です。「1つ目がテレワーク実施中、固定電話に出られないリスクです。固定電話が鳴りっぱなしになってしまうことで、機会損失や信頼低下につながってしまうことを懸念しました」と振り返ります。
当時、掛かってきた電話を転送しているケースも多くありました。転送の場合は、受電はできても、折り返しを行う場合は転送先の番号となります。また、転送は1つの番号しか登録できないため、代表番号やチームで利用する電話の場合、特定の社員にしか転送できません。そのため、固定電話番号で業務を行う従業員もテレワーク実施中にチームでの電話対応ができる環境の整備が急がれました。さらに有元はこう続けます。
「2つ目の課題は、テレワーク実施中に社員が自宅から電話する場合にはどうすべきかという点でした。外線に関しては携帯電話で代用できる一方、一部の社員は内線電話が使えないためで、内線番号しか分からない状況では通話ができませんでした。3つ目が、コロナ禍以前からのテーマでもあったフリーアドレス化です。配線された個人用の固定電話があり、物理的に移動できないためフリーアドレス化を推進しにくい面があったのです」(有元)
クラウドPBXはすでに市場に数多くの製品が提供されています。複数の選択肢の中から Zoom Phone を選んだ理由について、有元はこう説明します。
「検討段階で、複数製品の機能を比較しました。その結果、現状のIP-PBX環境でできていることを網羅的に実現できるのが Zoom Phone という結論に達したのです。グループ通話機能が優れていることはアドバンテージになりましたし、社内でメインのオンライン会議ツールとして活用されている Zoom Meetings のアプリケーションを利用できるため、新たにアプリケーションを導入する必要もないことも大きな後押しとなりました」(有元)
Zoom Phone の導入決定後、既存の固定電話を多く使っている部署を対象にした社内トライアルを実施。トライアルのアンケート結果を踏まえたマニュアルの改訂、社内説明会を経て2022年4月に本格的な運用がスタートしました。
従来のIP-PBXを利用する固定電話を段階的に廃止するため、クラウドPBXである Zoom Phone の移行をスムーズに行うにあたり、NRIでは相互接続装置(SBC:Session Border Controller)を導入することで既存のIP-PBXと共存する形を取りました。これで既存の内線電話と相互接続でき、もちろん内線電話同士なので通話料もかかりません。
「テレワークやハイブリッドワークを活用している社員もいる一方、業務上、常に出社することが必要な社員もいるため、まずは従来の固定電話のIP-PBXとクラウドPBXを使える環境を整備しました。そうして段階的に固定電話から Zoom Phone に移行していくロードマップを描いています」(有元)
NRIでは Zoom Phone 導入にあたって、どの端末で利用できるようにするかの検討も行いました。現在では、社員に支給されているスマートフォンのほか、インターネットに直接接続するPC、 Zoom Phone に対応した卓上型の電話機の3種類で Zoom Phone による通話ができるようになっています。
Zoom Phone 導入に伴い、既存の電話番号の変更も必要となりましたが、それによって大きな影響がない部署に関しては、新しい番号に変更し、各所に対する変更の通知を行ってもらうかたちとしました。一方で、既存の電話番号の引継ぎができないために、ヘルプデスク業務で利用している番号など、どうしても変更できない一部の電話番号についてはキャリアの外線転送を利用して Zoom Phone に着信させる手続きや各所への番号変更の連絡が必要です。番号引継ぎが可能となればこういった対応は不要となるため、今後 Zoom Phone でも番号引継ぎが可能となることを期待しています。
こうして Zoom Phone の導入を開始したNRIでは、テレワーク環境下でも部室やチームなどの代表電話の対応が行いやすくなり、今後より柔軟な働き方を推し進めていこうとしています。
さらに Zoom Phone は、インターネットにつながる環境さえあれば通話が可能であるため、携帯電話回線に障害が発生した際などに、使用可能なインターネット回線経由で利用できることで代替となることも期待されています。
「導入検討段階でテーマに出ていたフリーアドレス化や、働く場所を自由に選択できるハイブリッドワークを推進するためにも、固定電話を廃止していく流れを加速していきたいと思います。そのためにも、今後も社員に向けて Zoom Phone の使いやすさや活用メリットを伝えていきたいです」(有元)
現状は、インターネットに接続したスマートフォンやパソコンで Zoom Phone を使うことができる一方、NRIの社内ネットワークに接続したパソコンでは、プロキシの制約で Zoom Phone を使える状態となっていません。そうした環境の見直しも含め、今後もさらなる改善を図っていくとしています。
「社内の技術部隊と協力しながら技術面のハードルを越えて改善を進めることが今後の目標の1つです。そうしてプロジェクトを1つひとつ着実に進めていくことで、固定電話やデバイス環境に縛られない、どこでも自由に働ける環境をつくっていけると思います。これこそが私たち総務部の果たすべき役割だと考えています」(有元)
会社名 | 株式会社野村総合研究所 |
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住所 | 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ |
従業員数 | 6,488人(NRIグループ16,512人)2022年3月31日現在 |
業種 | コンサルティング、ITサービス |
(※1)米国Zoom Video Communications Inc., の日本法人、ZVC JAPAN株式会社が提供
インターネット証券のパイオニアとして、常にデジタルを活用した画期的な金融サービスを提供し続ける松井証券。同社では、イニシャルコストや維持管理コストが高いオンプレミス型のPBXからクラウドPBXへと電話環境のリプレースを検討していました。
Zoomプラットフォームを利用したクラウド型電話サービスです。
使い慣れたZoom アプリ上で電話の発着信が可能で、設定も操作も非常に簡単。
別のアプリをインストールする必要もありません。
「Zoom」の会議室版である「Zoom Rooms」は、役員室・応接室から大きなセミナールームまであらゆるサイズの会議室に対応可能なテレビ会議室システムです。
大画面で画面共有し相手の表情も確認しながら、あたかも同じ場所にいるような臨場感のある会議が実現できます。