関西電力では、同社とグループ会社である関西電力送配電を中心とする約4万人に上る従業員向けに「Zoom Meetings」を中核とするコラボレーションプラットフォームの「Zoom Workplace」を導入することで、利便性の高いビデオ会議環境を利用できるようになりました。さらに、セキュリティ強化に向けたシングルサインオン環境の構築のほか、部署異動の際に生じるライセンス付与をワークフロー化して効率化を実現するなど、大規模なライセンス導入の中であっても円滑な運用を可能にする工夫も行っています。
1951年の発足以来、人々の暮らしを支えるエネルギー供給事業を担ってきた関西電力。
現在ではエネルギー事業のフィールドは関西だけでなく日本全国にまで拡大し、グループ全体ではエネルギー事業、送配電事業、情報通信事業、生活・ビジネスソリューション事業の4つを中核事業に据え、幅広い事業を展開しています。
中期経営計画の中で「KX(関電トランスフォーメーション)」を掲げる同グループでは、KXを実現するための施策の1つとしてDXを推進しています。DXの推進にあたっては、一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)が主催する「データマネジメント大賞」の大賞を受賞、公益社団法人企業情報化協会が主催する「IT 賞」でのIT 賞(サステナビリティ領域)の受賞など、社外からも高い評価を受けています。
関西電力では遠隔会議の環境として、かつてはオンプレミスでのビデオ会議システムを導入していました。しかし、コロナ禍で在宅勤務が急増し、遠隔コミュニケーションのニーズが高まった際に、従来のビデオ会議システムのスペックでは同時利用できるユーザーの上限が課題に。そこで緊急的に導入されたのが無償版のZoom Meetingsでした。
「当時、すでに世の中で普及が進んでいたことと、無償で試用できること、またマニュアルなどなくても使える分かりやすい操作性からZoom Meetingsを選択しました」と関西電力 IT戦略室 情報通信技術グループ マネジャーの小野田哲也氏は話します。
しかし、このZoom Meetingsを活用する一方で、「社外の方とビデオ会議をする場合に無償版の40分制限では短い」「Zoomでオンライン研修やウェビナーを行えるようにしたい」といった声が増えたことを踏まえて、有償版の導入検討を進め、2023年に全社約4万人への大規模導入を実施しました。
「有償版の導入に際しては、改めて他社のビデオ会議システムと比較検討しました。その中でZoom はネットワーク帯域制御が細かくできる点、映像・画像共有がしやすい点を評価すると共に、すでに従業員が使い慣れている製品のほうが導入はスムーズに進むという理由で有償版への移行を決定しました。セキュリティについても第三者認証や暗号化などさまざまな点から検討して、当社基準でも問題ないと判断できました」(小野田氏)
約4万という大規模なZoom Meetings導入にあたって関西電力を支援したのがNRIでした。Zoom Meetingsの有償ライセンスへの移行に伴い、関西電力ではZoom用のID・パスワードによるログインではなく、認証セキュリティを強化するためにシングルサインオン環境を構築しています。
関西電力では、電気事業法の改正に伴い2020年4月に関西電力株式会社から関西電力送配電株式会社が分社化されています。これにより、それぞれで異なるユーザー認証基盤ができていたことから、シングルサインオン環境を構築するにあたり、これまで1つであったZoomのテナントを関西電力と関西電力送配電の2つのテナントに分離することとなりました。
「関西電力独自のガバナンスやセキュリティなどに対応した移行をスムーズに進めるため、NRIには計画策定の段階から参加していただき、技術的知見などを提供いただきました。」(小野田氏)
Zoom Meetingsの有償版に移行したことにより、ビデオ会議の時間制約がなくなり、利便性が向上しています。従業員に実施したアンケートでも92%が「Zoomに満足している」と回答しています。
また、ウェビナーやオンライン研修を開催しやすくなったことも導入の成果の1つです。
「当社では動画保管・配信のサービスを導入しているので、社内ウェビナーや説明会、研修の内容を、参加できなかった人に共有するためにZoom録画をフル活用しています」(小野田氏)
関西電力では、時間・場所に制約されない働き方である「デジタルワークスタイル(DWS)」を推進しており、業務効率化の点からもZoom導入の効果が出ているとIT戦略室 業務改革推進グループ マネジャーの杉浦一成氏は話します。
「在宅はもちろん、移動中にも気軽にコミュニケーションが取れるようになったことはZoom導入による大きな効果です。出張先などでも場所を選ばず、お客さまとビデオ会議ができる環境は現在のビジネスで欠かせないと感じています」
さらに関西電力では、従業員が自席でビデオ会議を行うほかにも、会議室などに常設してビデオ会議を行う用途としてZoom Roomsを導入しています。一度モニターやマイクなどの機材をセッティングすればすぐに会議を始められるのもメリットです。
「1カ所に集まって会議を行いたいというニーズも多いので、お客さまやグループ会社、社内のメンバーとビデオ会議をする際に、オフィスにいる従業員が1カ所に集まって会議に参加できるよう、モニターやスピーカーなどが一体となった据え置き型のテレビ会議端末を一部の社内会議室に用意しています。一方で、テレビ会議端末の増設には時間もコストもかかるため、手軽に導入できるZoom Roomsも使用しています」と小野田氏は語ります。
Zoom Roomsにより、常時接続のニーズにも対応しています。
「火力部門などでは、発電所の現場と本社のオフィスを常時接続してすぐに連絡が取れるようにしたいという要望があったことから、執務室内にZoom Roomsの環境を構築して常時接続を行っています。このような社内でのユースケースを受けて他の部門からも導入の相談が来ています」(小野田氏)
2つのテナントにまたがるZoomの大規模導入に伴い、当初はZoomアカウント管理に課題が生じましたが、2025年3月に新しいID連携の仕組みを構築することで解消しています。
「導入当初は、ID管理との連携は暫定構成であったため、例えば2つのテナント間で従業員の異動が発生した際に、Zoomライセンスの付け替えなど一部手作業で対応しなければならない業務が残っていました。現在では人事データと紐づくID管理のデータベースが変更されることでZoomのライセンスも自動的に反映されるようになりました」(小野田氏)
加えて従業員用ID管理の管理下にない業務委託先へのライセンス付与についても、別途申請・承認のワークフローシステムを構築。ワークフローによって承認完了すると自動的にZoomのライセンス付与が完了する仕組みです。
「これまで、ライセンス付与に関する個別対応の作業は少なくなかったのですが、この新たな仕組みを構築したことで、作業担当者の業務時間は年間で300時間近く削減されるなど、大幅な効率化を実現できました」(小野田氏)
今後も関西電力では、Zoom製品を有効活用してより働きやすい環境を目指していくとしています。
「例えば、Zoom Meetingsでは、ミーティング要約機能やホワイトボード機能も使えるようにしているので、よりその利便性を引き出せる使い方をしていきたいと思います」と杉浦氏は話します。
また、関西電力ではクラウドPBXであるZoom Phoneを社内電話として活用すべく導入準備を進めています。
業務改革推進グループの竹内 満紀氏は「このZoom Phoneは、Zoom Meetingsへの切り替えがすごくスムーズですし、通話内容をリアルタイムで文字起こししてくれるほか、他システムと組み合わせることで、音声データやAIの文字起こし結果をもっと有効に活用できると思っています。こうした機能をうまく活用すれば、業務の効率化だけでなく、コミュニケーションの質を高めたり、利用者のUXを向上させたりといった面でも大きな可能性があると期待しています」と今後の展望を語ります。
最後に杉浦氏は、「Zoomに関しては、いろいろな最新機能が登場しているので、NRIには当社の環境や使い方にあった機能をご紹介いただきながら、今後も当社のDX推進の取り組みをサポートしていただければと思います」と語ります。
会社名 | 関西電力株式会社 |
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住所 | 〒530-8270 大阪市北区中之島3丁目6番16号 |
従業員数 | 8,416名(グループ全体:31,437名) |
業種 | 電力会社 |
事業内容 | 電気事業、熱供給事業、電気通信事業、ガス供給事業 等 |
企業概要 | エネルギー分野におけるリーディングカンパニーである関西電力株式会社を中核とする関西電力グループでは、エネルギー事業、送配電事業、情報通信事業、生活・ビジネスソリューション事業を4つの柱として幅広い事業を展開しています。 |
URL | https://www.kepco.co.jp/ |
記事の内容は令和7年度時点の情報です。
(※1)米国Zoom Video Communications Inc., の日本法人、ZVC JAPAN株式会社が提供
山形県鶴岡市では距離が離れた庁舎間の移動が課題となっていました。そうした中で「 Zoom Rooms」を用いたオンラインコミュニケーションを積極的に取り入れることで移動の手間やコストを削減しました。さらに同市では、Zoom会議を応用して、書類申請目的で出張所に来訪した市民を遠隔サポートする取り組みも開始。
インターネット証券のパイオニアとして、常にデジタルを活用した画期的な金融サービスを提供し続ける松井証券。同社では、イニシャルコストや維持管理コストが高いオンプレミス型のPBXからクラウドPBXへと電話環境のリプレースを検討していました。
コロナ禍を契機にテレワークやハイブリッドワークが推進される一方で、オフィスの固定電話の着信対応をどうするか、また従業員間の内線通話をどうすればよいかに悩む企業も多いでしょう。そうした課題を解決するために、これまでIP-PBXを活用していた野村総合研究所では、クラウドPBX機能を提供する「 Zoom Phone 」の導入を開始しました。
Zoomプラットフォームを利用したクラウド型電話サービスです。
使い慣れたZoom アプリ上で電話の発着信が可能で、設定も操作も非常に簡単。
別のアプリをインストールする必要もありません。
「Zoom」の会議室版である「Zoom Rooms」は、役員室・応接室から大きなセミナールームまであらゆるサイズの会議室に対応可能なテレビ会議室システムです。
大画面で画面共有し相手の表情も確認しながら、あたかも同じ場所にいるような臨場感のある会議が実現できます。